「多くの人が表明したニーズに応えても、売れません。
少数の人が表明したニーズに応えると、売れてしまうのです。」
え!?逆じゃないの?と思われるかもしれません。
でも、実際こういうことも珍しくないのです。
この現象を梅澤伸嘉は「ニーズパラドクス」と名付けました。
パラドクス、つまり逆じゃないの?と思いたくなる現象のことです。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
ちょっと考えてみてください。
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何か思いつかれましたか?
調査などで質問した際に、多くの人々が表明するニーズというのは、お客様自身も気づいていて、問われれば答えられるニーズです。
顕在的なニーズと言えます。
顕在ニーズは、容易に収集できるため、競合他社も気づいていると思った方が良いでしょう。顕在ニーズに応えても、凡人コンセプトの商品になりやすいのです。
重要なのは、潜在ニーズの抽出です。
潜在ニーズは、ごく少数の人しか表明しない、または何らかの刺激情報を与えることでしか表面化してこないニーズです。
潜在ニーズは、定量的なアンケート調査をしても、高いスコアでは表れないのです。存在さえもしていないように見えるニーズともいえます。
潜在している強いニーズを見つけることができれば、他社に先駆けて売れる商品の開発がしやすくなります。
では、潜在ニーズはどのようにしたら見つけられるのでしょうか。
いくつかの方法がありますが、一つはレベルの高い定性調査を行うことです。
対象者自身が、心の奥底に潜んでいるニーズに気づくような調査を行うのです。
定性調査にはグループインタビューやデプスインタビューなどがありますが、ここではグループインタビューを使った潜在ニーズ探索についてお話しします。
グループインタビューという手法は市場調査ではよく行われていますが、私から見ると「一般に行われているグループインタビューは、潜在ニーズの探索までには至らない方法で行われている」と思います。
以前にもお伝えしましたが、一般によく見かけるグループインタビューは、対象者に質問し回答を得る、といったことを繰り返す「一問一答形式」に近いものです。
私たちのグループインタビューは、グループダイナミズムを最大限活用するため、グループダイナミックインタビュー(GDI)と称することがあります。
図をご覧ください。
消費者自身も気づいており、企業からも見えやすいのが、上の顕在意識の部分です。
でも、消費者の意識は潜在している部分が非常に多いのです。
消費行動の95%は潜在している意識から生じる、という説もあります(ザルトマン)。
これまでの経験から、私もその説は正しいと思っています。
この潜在している意識やニーズを探るためには、技術が必要になるのです。
グループダイナミックインタビューでは、できるだけリラックスした雰囲気の中で、広めの話題で、対象者の方々に自由に話しあってもらうというスタイルを重視します。
自由に話し合うことによって、グループダイナミズムという効果が表れ、対象者自身の気持ちに“気づき”が生じやすくなり、潜在ニーズ抽出がしやすくなります。
加えて、刺激となる情報を使うことで、より一層潜在している意識や、潜在ニーズの表出を図っていきます。
そのためのツールやテクニックも大いに駆使していきます。
実施中に、新たな仮説が浮かんだ場合には、司会者(モデレータやインタビュアー等ともいいます)は臨機応変にその仮説を話題として投げかけていき、情報の深堀りを行います。
司会者は会の進行をしながら、“頭フル回転”で反応を読み取っていくのです。
図をもとに例えますと、グループダイナミックインタビューを通して、対象者同士が自由に話し合うことにより、潜在意識がいわばグルグルとかき混ざるかのような現象が現れます。そして、それが次第に上がってきて、対象者が気付き(顕在化し)、言葉にしてくれるという効果が表れます。司会者は、その言葉や表情から、潜在ニーズを読み取っていくのです。
マーケティングコンセプトハウスでは、こうした方法を身に着けたスタッフが司会者として活動しています。かなり厳しいトレーニングを受けた者たちばかりです。
私たちが、数量で把握する調査(定量調査)だけではなく、定性調査を非常に重視している理由の一つがここにあります。
潜在ニーズや未充足ニーズの見つけ方については、今後も紹介していきます。