デプスインタビューってご存じですか?
「インタビュアーと対象者との面談による調査でしょ?」
「一対一の面接調査ですよね?」
という答えが返ってきそうです。
もちろん間違いではありませんが、これらは「1オン1インタビュー」とか「パーソナルインタビュー」とは言えても、それだけではデプスとは言えないのです。
私が定性調査を勉強し始めたころ、デプスインタビューは、「臨床心理の専門家にしかできない」などと言われていました。
デプスインタビューとは、通常の質問では答えられないような、人の奥深くにある心理や感情をひきだす面接法であり、心の深層に迫るために、「デプス」という言葉が使われているのです。
「深層面接法」などと訳されます。
ところが、今日の市場調査の世界では、デプスインタビューと称して、単なる質問を繰り返して消費者に回答させ、それらを整理した報告書が書かれ、その情報をもとに、新商品の開発やブランドのリニューアルなどが行われている実態があるようです。
こうしたことは独自的な商品作りやブランドの開発にはつながりにくく、「商品開発の95%は失敗」という結果を招いている要因の一つになっていると考えられます。
質問して簡単に回答できる内容は、消費者の顕在化している意識領域と言えます。
容易に収集できる情報で、競合他社も把握している可能性がとても高いのです。
商品開発やマーケティングを成功させるためには、企業側も消費者側も気づいていない、つまり潜在意識や潜在ニーズを探ることが重要です。
そのために、“本当のデプスインタビュー”や“グループダイナミックインタビュー(GDI)”が必要になるのです。
昨今、オンラインによるインタビューが増えており、私の会社でも、デプスインタビューもGDIも、オンラインによる実施が可能となっています。
今回は、冒頭でお話しした「本当のデプスインタビュー」を行う上で、モデレータ(インタビュアー)が「すべきこと」と「すべきでないこと」のいくつかをお伝えします。
とても重要なことです。
今回のメルマガだけではお伝えしきれないので、次回も続けます。
1.「イエス」「ノー」で答えられてしまうような問いかけをしない。
このことは一般に、「閉じられた質問」ではなく「開かれた質問」をすべき、という表現がされることもあり、ご存じの方も多いかもしれません。
二者択一的な回答では、断片を拾うだけになりやすいのです。
“デプス”を知りたければ、自由に広がりのある話をしてもらうことが必要です。
2.「質問」ではなく、できるだけ「話題」を投げかけるようにすべき。
これは1.にも関連しますが、「話題」を提供することを心掛けるべきです。
「〇〇ですか?」よりも「〇〇についてお感じになることを、自由にお話ししていただけますか?」というような投げかけが重要です。特定の話題について、広く自由に話してもらうことが必要です。
3.理由を問い詰めない。
「対象者が発言したことの理由」はぜひ知る必要がありますが、「なぜですか?」「どうしてですか?」を繰り返すのは禁物です。「なぜ」を繰り返せば、理由の深堀りができる、という誤解を多くの人が持っています。このことは、以前グループインタビューの説明をした時にも触れました。
「なぜ?」を追求されると、対象者はストレスを抱きます。その場を離れたくなるような気持ちになることもあります。
そうなると対象者は―
「理に適う理由を見つけ出して言おうとする」
―という状態になります。
嘘を言うとは限りませんが、モデレータが納得するような、もっともらしい理由を発するようになります。ところが、真の深い理由は別のところにあることが多いのです。
理由を知りたければ、例えば「〇〇とおっしゃった、そのあたりのお気持ちを教えていただけますか?」これが一つの常套句です。
他にも対象者の発言をそのまま“オウム返しをする”なども有効な方法の一つです。
なぜ、モデレータが直接的に理由を追求せず、「そのあたりのお気持ちを・・・」などと言う方が良いかわかりますか?
「そのあたりのお気持ち」には、理由に該当することだけでなく、その背景にある事柄や、もたらされた結果など、周辺情報も含まれています。
真の理由を知りたければ、対象者が語る狭い意味の理由だけでなく、「理由をもたらしている背景的な理由」や「複数の原因と複数の結果の具体的なつながり」など、それらを取り巻く周辺の事柄を理解する必要があります。そこから心の深層をうかがい知ることができるのです。
場合によっては、ズバリ理由を尋ねたい時もあります。
その場合でも「なぜ?」「どうして?」よりも、「それって何か理由がありますか?」などのように遠まわしに尋ねる方が、対象者はより自由な発言がしやすくなります。
この話は次回に続きます。
マーケティングコンセプトハウスでは、オンラインでもオフラインでも「本当のデプスインタビュー」を行うことができます。
担当スタッフは、きちんとしたトレーニングを受けた者たちです。
次回もそのノウハウをご紹介します。