図をご覧ください。
お客様のニーズというのは、この図のように大きく3層になっており、互いに目的と手段の関係になっています。
3層とは、上からBeニーズ、Doニーズ、Haveニーズのことであり、それぞれが更に複数の層構造になっているのが普通です。
下位になるほど移ろいやすく、その種類は多くなり、また具対的になっていきます。
この考えは、私の師、梅澤伸嘉による「ニーズの深層構造理論」というものです。
各層別に説明していきます。
一番下を商品ニーズ(Haveニーズ)と言います。
「〇〇が欲しい」「〇〇を買いたい」「〇〇を使いたい」というように、商品に直接つながっているニーズです。
その上の生活ニーズ(Doニーズ)というのは、商品を求める目的のニーズ、つまり商品を使うことで生活の中で何を実現したいのか、という気持ちを示しています。
通常、商品開発やマーケティングで重要視すべきなのは、この「生活ニーズ」です。
商品ニーズにだけ着目していると、既存商品の改良程度に留まりやすく、画期的商品は生まれにくいのです。
ちなみに最上位の段階を人生ニーズ(Beニーズ)といいます。
生活ニーズの上位(目的)にある、人生で何を実現したいのか、という気持ちを示しています。誰もが持っている普遍的なニーズ、「本能」ともいえるニーズです。
この人生ニーズは10個ある、というのが梅澤伸嘉の仮説です。
この10個を総称して10大基本ニーズと呼び、また「幸福追求ニーズ」とも言います。
10大基本ニーズの話は、別の機会に詳しく述べます。
ところで、マーケティング学者として有名なフィリップ・コトラーもセオドア・レビットも本の中で引用している、「ドリルと穴」の話があります。
ドリルが欲しいというのは、穴が欲しいという上位のニーズがあるからであり、「穴」の方を重視すべきである。ドリルのレベルをウオンツと言い、ニーズというのは「穴」の方である。
・・・というような内容です。
が、私自身は、この説明よりも、図で示したように「ニーズが層構造となっており、それぞれが目的と手段の関係で繋がっている」という考え方の方が、商品開発においては役立つと思っています。
例えば、「穴が欲しい」のさらに上位ニーズが、「棚を直したい」であったとします。この「棚を直したい」には、さらに上位ニーズの「棚に並べたものが落ちないように、かつ見栄え良く並べたい」などがあり、元通り以上の状態を求めている可能性があります。
この場合、「棚を直したい」が顕在ニーズで、「もっと良い状態にしたい」が潜在ニーズであるとも考えられるのです。
「ドリルの目的は穴である」ということに留まることなく、「穴が欲しい、それはどうしたいためか」という更に上位の目的を探るキーワードを使って考えると、穴をあけるという手段とは別の方法でニーズに応える商品やサービスが考えやすくなります。
このように生活ニーズの中の上位から発想することも、新商品開発においては有効なのです。
また、このニーズの層構造図は、商品カテゴリー毎に作ることや、特定の生活領域に関して作成することをお勧めします。
例えば、「チョコレートに関するニーズの層構造図」を作ることで、そもそも消費者はチョコレートに何を求めているのか、がよくわかります。
ただし消費者属性によってニーズ構造は異なることが普通です。
女子高生とシニア女性とはチョコレートに求めるニーズは同じではありませんので、誰のニーズ構造かを明確にする必要があります。
特定の生活領域に関するニーズ構造図とは、例えば「朝食に関するニーズ構造」や「オフィスの休憩に関するニーズ構造」などです。
特に、新たな分野に参入する際には、その分野の全体がわかり、社内でも共有がしやすくなるため、非常に役立ちます。
その際、留意する点があります。
単に社内で推測しながら作ったものは、仮説の度合いが高く、時には間違ったニーズ構造図になる可能性もあります。
ターゲットとなる消費者を対象にした定性的なインタビューを行い、それを分析しながら作ることが重要です。
ニーズ構造図の作り方は、わかりやすく手順化されています。
ご興味がありましたら、お問い合わせください。